世界の果てに - 百年の光 -
ーーーーー……‥
見上げる三度めの空は、綺麗に輝いてはいなかった。
せっかくの満月なのに、雲に覆われて隠れている。視線を少し落とせば、城下町に灯る明かりが煌々と見えるけど。
「ーーー寒ぃな…」
もともとこの城の標高が高いのもあってか、時折吹き抜ける風が嫌に冷たく感じる。
肩を震わせた俺は、ぼんやりと遠くを見つめていた。
…本当に、この世界は救われたんだろうか。
目に見える変化がないから、いまいち実感がわかない。救われたとしても、また百年後に傾くかもしれない。
いや、今回は五十年しか経ってないのに傾いたから……
「……やめだ」
考えたって仕方ない。とりあえず、生け贄を捧げるとかいう馬鹿げた祭壇はちびっこがぶっ壊したし、あの変な建物も崩れ去った。
国王の行動からすれば、あそこで自らを犠牲にしたことには意味があったように思う。
「………」
世界が救われたなら、もう少しマシな気分になってもいいんじゃないか。
そう自分自身に問い掛けてみるものの、何故こんな複雑な気分になるのか、理由は分かりきっていた。
ーーーアイツがこの世界に残る理由は、もう無い。
たったそれだけのことが、頭から離れないからだ。
「だっせぇな…」
ハッ、と自嘲気味に吐き捨てれば、未だに目覚めないちびっこの顔が浮かぶ。