世界の果てに - 百年の光 -
いつものように、憎まれ口で返すことはいくらだって出来た。…ただ、今はそんな気分じゃなかっただけ。
「腕は?」
「あ、お医者さんが頑張ってくれたみたいで、もう痛みはないよ」
「…なら、良かった」
フイ、と視線を背けて言ったあと、視界に嬉しそうに笑うちびっこの顔が映ってしまった。
…くそ。こんな雰囲気、俺は苦手なんだ。
「あ、そういえばここに来る途中で、オーガとフィオに会ったよ」
俺の気持ちを知ってか知らずか、ちびっこの方から話題を逸らしてくれた。
「オーガはなんかこう…国王の威厳みたいのがもうあって、びっくりした。フィオも亡国の王子らしいけど、もうオーガの側近になること決めてたしね」
「アイツの戴冠式でのスピーチ、たいしたもんだったからな」
「………」
「あん?何だよ」
瞬きを繰り返したちびっこは、へぇーと感心したように言ってから口を開いた。
「エルでも人のこと褒めるんだね」
「…喧嘩売ってんのか」
「だって、オーガには特に敵対心持ってなかった?」
あはは、と無邪気に笑うその姿は、この先もずっと、近くにいるんじゃないかと勘違いさせるもので。
ーーーそれが無性に、腹が立った。
「…?エル?」
行くな、なんて言えない。そばにいろ、なんてもっと言えない。
ただ、今だけは。
もっと近くにーーーーー…