世界の果てに - 百年の光 -

俺の腕のなかにスッポリと収まったちびっこは、僅かに体を固くした。


それでも、抵抗されなかったことに少し安心する。


「……え、ええ、エエエエル…?」


「エ、が多い」


明らかに動揺しているのが声の震えから伝わってきて、俺は自分の顔が見えていないのをいいことに、口許に笑みを浮かべた。


静寂に包まれた闇夜。

時折吹き抜ける風に、ちびっこの肩が小さく震え、その度に腕に力を込めた。


俺もちびっこも、何も言わない。…何も、言えない。


「……エル」


不意に破られた静寂に、俺は少しの緊張を伴った。…が。


「…もう一回、あたしを名前で呼んで」


「ーーーは!?」


予想外の言葉に、俺はちびっこの肩を掴んで体を離し、間抜けな声を漏らす。


ちびっこは瞬きを繰り返し、すぐにムスッと口を尖らせた。


「何よ。あたしが瓦礫に潰されそうになったとき、莉緒って呼んでくれたでしょっ」


「……空耳だ」


「!〜わかった、もうい…」


「ーーーーーリオ」


意外とすんなりと、口を突いて出た名前。


「リオ」


「……っ、ず、ずるいっ…」


もう一度呼ぶと、ちびっこの顔は一気に赤くなった。

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