世界の果てに - 百年の光 -
確かにあの時、ちびっこの頭上が崩れた瞬間、俺は咄嗟に名前で呼んだ。
まさか、それをしっかり聞かれてたとは思っていなかったけど。
「リオ。…なんだよ、お前が呼べっつったんじゃねぇか」
「そ、そうだけどっ…そうなんだけどっ!」
相変わらず真っ赤な顔で、視線を泳がせている反応が面白くて、何度も名前を呼ぶ。
…今まで、ちゃんと呼ばなかった分だけ。
「リオ。バカリオ。アホリオ」
「……ちょっと」
じろりと睨まれても、怖くもなんとも無い。出会った当初は面倒だった言い合いも、今はどこか楽しんでいるなんて…おかしくなったな、俺。
「…エルと、アスティは…」
「あん?」
「…二人は、この先も盗賊続けるの?アスティはマーサと、こっちが照れるくらいくっついてたし…」
様子を伺うような視線。二人は、という言葉に、過剰に反応する必要は無いと自分に言い聞かせる。
「今の生活を変えるつもりはねぇよ。ただ、活動の拠点をここにすることに決めた」
「拠点…」
「自分達で生活費を稼いで、ここに帰ってくる。こんな俺たちに支援を申し出る、変な国王がいるしな」
俺がそう言うと、ちびっこはどこか安心したように表情を和らげた。
その表情を見て、警鐘音が頭に鳴り響いたが、手遅れだと気付く。
「ーーーーーあたし、明日帰ることに決めたよ」
ーーーもう、その手は掴めない。