世界の果てに - 百年の光 -
∴笑顔でさようなら
ーーー幸せな時間は、確かにここにあった。
「おはよう!!」
オーガが用意してくれた、豪華な客室から出ると、ちょうど隣の部屋からエルとアスティが顔を出す。
あたしの大声に、まだ眠そうだった二人は揃えて肩をびくっと震わせた。
「……リオ、お早う。朝から元気だね」
「ちょっとした騒音だな」
栗色の髪の毛がボサボサに広がったアスティに、気だるそうに欠伸を噛み殺すエル。うん、いつも通りの朝だ。
「…何ニヤニヤしてんだ」
思わず緩んでいた表情をエルに指摘され、何でもない!と首を振ったあとに絡む視線。
どきりとしたけど、エルは特に何も言わず、フッと目を細めたあとアスティの寝癖をからかいはじめた。
「………」
ああ、ダメだ。
決めたはずなのに、ちょっとしたことで心が揺らぐ。
昨夜、元の世界に帰ると告げたあたしに、エルは一瞬表情を歪めた。
傷付いたような、苦しそうな表情を上手く隠せずに、「分かった」と無理矢理笑ったんだ。
エルと一緒にいたい。エルが好き。
すぐに口から飛び出そうとした言葉を、唇を噛み締めて閉じ込めた。
エルも同じ気持ちでいてくれると、抱き締められたときに感じたから。…だから、余計に口にできなかった。
口にしてしまったら、きっともう、この想いは止められない。