世界の果てに - 百年の光 -
「ーーー…リオ?」
アスティの声が突然耳に届き、あたしは知らずに俯いていた顔をハッと上げた。
「…あ、えっと…」
「大丈夫?ほら、朝ご飯食べに行こう」
明らかに動揺していたあたしに、アスティは優しく微笑む。
何もかもお見通しなんだろうなぁ、と思いながら、気持ちを落ち着けて小さく頷いた。
小広間に入ると、既に食事は始まっていて、カチャカチャと楽しそうに食器が鳴っている。
「お!お三方、おはよー」
片手を挙げて声を掛けてきたオーガに続いて、フィオ、マーサが「お早うございます」と声を揃えた。
あたしたちも挨拶を返すと、側で控えていた数人の侍女が席へと案内してくれる。
既にずらりと並べられていた豪華な朝食を前に、あたしの気持ちは少し上昇した。
「うわ、おいしそう!」
「リオ、この辛そうな香辛料、エルのお皿にこっそり入れてみよっか」
「おい。丸聞こえな悪巧みすんな」
オーガの厚意で、国王の部屋での朝食を提案されたのは昨日の夜のこと。
エルを探しに行く途中で会ったオーガは、既にあたしが元の世界に帰るということを分かっていたように、こう告げた。
ーーー『もう、準備は整ってるから』
ちくりと胸が痛んだけど、帰れるということに安心した気持ちもあった。
あたしの微妙な表情を読み取ったかのように、オーガはみんなで食事しよう、と言ってくれたのだ。