世界の果てに - 百年の光 -
みんなして何なの!?まさか、このままバルコニーから突き落とされたりしないよね!?
…なんて、ぐるぐると嫌な方向に思考回路が巡っている間に、バルコニーの真正面の、大きなアンティーク調の扉の前に立たされる。
「さ、行きますよ、リオさん」
「ままま待って!行くってどこにーーー、」
フィオとマーサによって、左右から開け放たれた扉。
降り注ぐ太陽の光に目が眩み、ぎゅっと瞑った瞼を徐々に持ち上げてみる。
…気のせいかと、思った。風に乗って届いた、大きな歓声。でも、気のせいじゃなかった。
「この世界を救ってくれてありがとう!!」
「私たちの為に戦ってくれて、ありがとうございます!」
まるで引き寄せられるように、バルコニーへ足を踏み出したあたしは、手摺から階下を見下ろした。
城の敷地を埋め尽くすほどの、人。その人たちはみんな笑顔であたしを見上げていて、口から飛び出す感謝の言葉は、あたしの心を震わせるには十分だった。
「お嬢ちゃん、ちっこい体でありがとうなー!」
「おねぇちゃーん!ありがとー!!」
「私たちは貴女のこと、忘れませんからね!」
…何も、できなかった。国王の命を、犠牲にしてしまった。
蔑まれても、非難されても仕方ないって、思ってたのに。
「ずるいよ……」
ポツリと漏れた言葉は、歓声に掻き消され、あたしは自然に笑みが零れた。
世界を救える力もない、ただの女子高生のあたし。それなのに、ここではまるでヒーローみたい。