世界の果てに - 百年の光 -

コツ、という足音に気付くと、いつの間にかオーガが隣に立っていた。


あたしに笑いかけたオーガは、右手をスッと空へ伸ばす。途端に、辺りは静寂に包まれた。


その影響力に驚いていると、咳払いを一つしたオーガが口を開く。



「ーーーでは、宴を始める!」



……今、何て?

と聞き返したかったけれど、割れんばかりの歓声と拍手が先程の静寂を掻き消し、あたしは言葉を飲み込んでオーガを見るしかなかった。


視線に気付いたオーガは、あたしの肩を抱いて回れ右をすると、そのまま室内へと戻る。


背後で扉が音を立てて閉まり、再び静寂が訪れた。


「…と、いうわけなんだ、リオちゃん」


「ごめん、どういうわけか全く分からない」


笑顔で締め括ろうとするオーガに、すかさず返事をしてからあたしの肩にまわる腕をパシッと叩く。


手厳しいー、と嘆くオーガの横で、フィオが説明をしてくれた。


「オーガ様の戴冠式が終わったあとに、世界が救われたお祝いをしたいとの声が多く挙がったんです。リオさんにお礼を言いたい、との声もです」


「お礼なんて、そんな…」


「いいえ。国民は全てを知り、貴女に感謝をしてるんです」


その証拠が、先程の国民の笑顔と歓声ですよ。そう言ってフィオが微笑むから、あたしはそれ以上否定できなかった。


「…とまぁそういうわけで、リオちゃんが目を覚まさない間にこっそり準備してたわけだから、付き合ってくれるよね?」


オーガの問い掛けに、すぐには答えられず、自然と視線がエルとアスティへ向く。

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