世界の果てに - 百年の光 -
あたしが言い返そうと身構えると、アスティがするりと体を割って入ってくる。
「リオ、どうどう」
どうどうって…あたしは馬か!
アスティの気の抜けた宥め方に、気分がスッと落ち着いたあたしは、改めてエルを見る。
「…もう、あたしは楽しみたいんだけど」
「だったら楽しそうに笑ってろよ」
「え?」
エルの言葉にきょとんとして聞き返すと、今度は両頬をぐいっと引っ張られた。
「ひゃえ!?に、にゃにすんのよ!」
「お前が背負ってた運命は、もう忘れろ」
「………っ、」
「忘れて、今この瞬間を生きろ。俺たちと一緒に」
真剣な琥珀色の瞳は、相変わらず曇りなく綺麗に輝いている。
その眼差しと言葉に、じわりと滲みかけた涙をぐっと堪えた。
…エルの言うとおりだ。泣くくらいなら、その分たくさん笑ってこの世界とサヨナラしたい。
「……ん」
こくこくと、力強い言葉に同意してみせると、エルは満足したように手を離した。
「分かったならいい。行くぞ」
「…ごめんねリオ、女の子の頭を平気で叩いたり、ほっぺつねったりする相棒で」
「ううん、大丈夫だよアスティ。出会ったときから知ってるから」
「おい、喧嘩売ってんのかお前ら」
あたしたちの笑い声は、心地よく街に溶けていった。