世界の果てに - 百年の光 -

あたしの力強い返事に、フィオは少し安心したように顔を綻ばせた。


「…良かったです。な、マーサ?」


「マーサ?」


フィオの視線を辿ると、柱の影からゆっくりと姿を現したマーサが目を潤ませ、あたしに抱きついて…いや、飛び付いてきた。


「良かったですっ!リオさんなら、リオさんならきっと忘れないでいてくれるだろうと思いましたっ!」


「ちょ、ま、マーサっ…」


「あはは。マーサに随分懐かれてますね、リオさん」


フィオは楽しそうに笑ってるけど、マーサの力が思ったよりも強い。細い体のどこにこんな力が。


ようやくその腕から解放されると、マーサは真っ直ぐにあたしを見上げた。


「リオさん。わたし、決めたんです。一流の魔術師になるって」


「一流の…」


「はい。兄さんより、もっとです」


ぐっと拳を握りしめ、マーサは柔らかく微笑んだ。



「リオさんの世界と、わたしたちの世界が繋がるように。リオさんとーーーまた、逢えるように」



その言葉に、自然に涙が零れた。


この世界と、みんなと、繋がっていていいんだと…またいつか、逢えるんだと思うだけで、こんなにも胸が熱くなる。


「リ、リオさんっ?」


「ごめ、マーサ…う、嬉しくてっ…」


涙が止まらないあたしを見て、おろおろとするマーサを安心させるように、その小さな手をぎゅっと握った。

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