世界の果てに - 百年の光 -

「マーサ…ありがとう。あたし、またみんなに逢えるって…信じてるから」


「……っ、はい!」


マーサは顔を輝かせると、ふぅ、と深呼吸をひとつしてからフィオを見る。


その表情は、もう立派な魔術師といえるほどじゅうぶんなものだった。


「…兄さん、始めましょう」


「分かった」


フィオは短く返事をして頷くと、あたしを振り返る。


「リオさん、僕たちは先に奥の部屋で準備していますので、エルさんたちを呼んできて下さい」


「…うん」


フィオはあたしに微笑んで、マーサと共に廊下の突き当たりの部屋へと向かった。


あたしはその姿を見送ったあと、エルとアスティ、オーガが待つ部屋の扉を開ける。


…と、その光景を見て固まってしまった。


「あ、戻ってきた」


のんきにそう言ったアスティの両手には、短剣が。


「おっせぇな。いつまで待たせる気だよ」


苛立ちながらそう言ったエルの手には、長剣が。


…ちょっと待って。何で部屋の中で二人で戦ってるわけ?そして何でそれを笑って眺めてるのオーガ!


驚きと呆れから、開いた口が塞がらないあたしを見たからか、アスティがゆっくりと短剣をしまった。


「ごめんねリオ。エルがそわそわして落ち着かなかったから、ちょっと体動かしてたんだ」


「…アスティてめぇ、寝惚けたこと言ってんじゃねぇ!」


ガチャン、と音を立てて剣を鞘に収めたエルが、アスティに噛みつく。

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