世界の果てに - 百年の光 -

ぎゃあぎゃあと吠えるエルに、アスティがぼそっと「…負け犬の遠吠え」なんて言うから、オーガが盛大に噴き出して、さらにエルが怒って。


…なんていうか、もう。最後までいつも通りなことが、嬉しくてたまらない。


「エル、アスティ、オーガ」


あたしが名前を呼ぶと、三人が口をつぐんで一斉にこっちを向く。


「奥の部屋で、フィオとマーサが待ってる。…一緒に来てくれるよね?」


明確な返事は無かった。でも、みんなが当たり前だろ、というように笑ってくれた。


ぞろぞろと連なって、フィオとマーサが待つ部屋へと移動する。


ふと窓の外に視線を向けると、鮮やかな花火が夜空を彩っていた。日本で見た花火大会と重なって、じわりと何かが込み上げてくる。


ーーー帰るんだ、これから。


「…おい」


フィオたちが待つ部屋の扉を開け、最初にオーガが、次にアスティが入った。続けて入ろうとする前に、エルに呼ばれて振り返る。


「エル?」


「…あー…、その、何だ」


言いづらそうに頭を掻き、あさっての方向を見ながら、エルが口を開く。


「…ありがとな」


「!」


ぼそっと呟かれた言葉は、あたしの胸をぎゅっと鷲掴みにするにはじゅうぶんすぎた。


エルがお礼言うなんて気持ち悪い!…なんて、そんな憎まれ口もすぐには出てこなかった。


「おら、早く入れよ」


エルは照れ隠しからか、あたしの背中を片手でぐいぐいと押しながら部屋へ入る。

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