世界の果てに - 百年の光 -

扉から入ってすぐ横の壁にアスティが寄りかかっていて、あたしの頭を優しくポンと叩いて微笑んだ。


「リオ、オレからもありがとう」


「…アスティ…」


二人からの『ありがとう』に、あたしは胸を張って帰りたい。


何度も助けてもらった大切な仲間に、少しでも何か返せていた証だと思うから。


「リオさん、こちらへ」


フィオに促されて、あたしは床に描かれた魔方陣のような所まで足を進める。


その上に立った瞬間、体が不思議な感覚に包まれた。


「…リオさん、僕たちは、貴女のことを生涯忘れません」


「リオさん、絶対また会いましょうね!」


「フィオ…マーサ」


「リオちゃん、いろいろありがとう。見ててよ、俺は立派な国王になるから」


「オーガ…うん、みんなありがとう」


別れの挨拶って、やっぱり慣れない。


あたしの正面に立っていたエルとアスティに、最後の言葉がうまく見つからずにいると、先にアスティが口を開いた。


「リオ。この世界はずっと、百年に一度傾いてきた。リオが呼ばれたのは五十年目で、もしリオが救ってくれなかったら、いずれこの世界が傾く期間はどんどん短くなっていたかもしれない」


「………」


「今まで、この世界の犠牲になった人たちにとってもーーー、」


「ーーー俺達にとっても、間違いなくお前は光だった」


アスティからエルへと、繋がれた言葉。

最後まであたしは、この二人には敵わない。

< 612 / 616 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop