世界の果てに - 百年の光 -

真っ赤な鮮血が、空を舞う。


「ぐあっ…、」


呻き声と共に、山賊が崩れ落ちていくのが分かった。


見開いたあたしの瞳に映るのは、少し怒ったような顔と、焦ったような顔。


「大丈夫か!?」

「大丈夫?」


エルとアスティを見た瞬間、涙が零れた。


「―――っ、ふ…」


怖いなんて、思う暇もなかった。


そんな僅かな時間に、二人はあたしを助けてくれたんだ。


「だーっ、泣くなッ!」


「だ、だって…エル、ケガ…」


「こんなん掠り傷だっての!」


エルの左肩に縦に付けられた傷は、きっと山賊が振り下ろした刀の跡。


そこからどくどくと流れる血は、決して掠り傷とは言い難かった。


「大丈夫だよ、リオ。エルなら心臓刺されても死なないから」


「どんだけ不死身だ俺は」


二人のやりとりを耳に入れながら、あたしは涙が止まらなかった。


―――死。


一瞬でも感じたこの気配が、忘れられなくて。


< 92 / 616 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop