あの子は、王子!?
―蝶side
あの子はいつだって一人だった。引き取られている家の年の離れた兄があの子には居たはずだが、年が離れているせいで下校の時刻がどうしても遅くなってしまうし、部活動だってある。そのせいか、休日以外はなかなか一緒に遊べないようだった。
1人の時はずっと本を読んでいた。みんなの居る公園に居ても、同じ年齢の子供たちの輪には混じらずに一人黙々と本を読んでいた。
光の中でただ静かにベンチに腰掛け、本を読んでいる。その光景は、本人の容姿と相まって美しい事で有名だった。
でも、いつも一人。誰かが声を掛ければ、首を横に振るばかり。話せない子なのかと思ったが、あの子の母親らしき人が迎えに来れば小さいけれども良く通る声で「はい。」と答えていた。
後で知った事だが、あの女性は家政婦兼ナニーと呼ばれるベビーシッターの人だったらしい。
あの子の両親は穏やかな風貌に似合わず、大企業を担う多忙な社長だ。(家の両親もそうだが。)
まぁその所為か、あの子の持っている不思議な力が分かっても、
「そうか、良かったじゃないか!!その力は大切な人や、本当に困っている人の為には惜しまず使いなさい。ただし、人を傷つけてはいけないよ。分かったね?」
「そうねぇ。人前ではあまり見せない方が良いわねぇ。人は自分とは違うものを排除しようとするのが、世の常だからねぇ。それでもその力はあなたの一部であり、神様からの授かり物。それを背負ったのはあなたの運命。大事になさい」
と、ほけほけ笑いながらのたまったそうだ。一方兄はと言うと、
「そうか、良かったじゃないか。でも、この可愛さと相まってその力があったらどこかに連れて行かれるかもしれない!!?あああああああぁぁぁぁ、っぁぁぁぁ!!!!!!!」
と頭を抱えて転げまわるほどの親馬鹿ならぬ、兄馬鹿全開だったらしい。
本人はそんな兄の事を呆れた口調で言うが、表情はとても嬉しそうなのでこちらも嬉しくなってくる。