昔話
07
ドアを開けた恋人は不思議そうな顔をして



「どなたですか?」



と尋ねた。



男は笑って



「忘れたのかい?私だよ。」



と答えた。



それでも彼女が不思議そうな顔をしているので、


「ずっと待たせていてごめんよ。でも約束どおり帰ってきたんだ。
私が分からないのかい?」



と言った。



その言葉に恋人は泣き崩れた。



「なんて酷い人。
私があの人の顔を忘れるわけがないわ!
あの人は一年前に死んだのよ。
どうしてこんなことするの?」









そう、戦争の時に負った怪我のせいで
男の顔は以前とは大きく変わってしまっていたのだ。
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