河川敷の風
カラカランとヒロトの引く自転車のチェーンがゆっくりと音を奏でている。
私たちはゆっくりと夜の河原を歩きながら家へと向かった。
「ユリは高校に入っても変わんないな。」
ヒロトは少し遠い目をしながらそう言ったので
ユリはあえてふざけた口調で
「あっそう。」とだけ言うとわざとソッポを向いてヒロトに構ってもらおうとした。
「ユリ、来年から受験なんだよ。少し大人になったらどうだ。」
まるで5つも10つも年上の人間が言うようなことを口にしたが
ヒロトが言うと不思議と自然に聞こえてくる。
「私、受験しないもん!大学行かないで働く。」
「どこで?」
「・・・。」
ヒロトはDarkな空を眺めながら少しハニかんで
「何も考えてない所もユリらしいよ。でもね、俺はお前が心配だ。
少し先の事を考えてみな。」
ユリはいつになくおせっかいで説教染みているヒロトの言葉を無視して顔をしかめた。
「ユリ、聞いてるか?
俺だっていつまでもユリのお世話をしてられないんだからな。」
「何よそれ!お世話なんてしてくれって頼んでないし!」
ユリはお世話という言葉に反応して怒った訳ではない。
「いつまでも・・・・・」という事はもう近い将来ユリの傍にいれなくなるって事?
そんなのは絶対嫌だが、ずっと傍に居て欲しいとは決して言えなかった。