王子様じゃナイト!
No.5 ピアノの王子様
一目惚れ。というものがある。ふとした拍子に人を好きになってしまうことだ。

それを数日前、わたしはとうとう経験してしまった。


それは初夏に入りたてのある日の放課後。
音楽室に忘れ物をしてしまったときのことだった。

「まさか音楽室に忘れ物しちゃうなんて…ついてない…」

放課後の音楽室なんて、ただの怪談スポットじゃないか。
わたしはビクビクしながら音楽室に向かった。


音楽室に近付くたび、何かが聞こえてきた。

「……ピアノの音?」

そう、聞こえてきたのはピアノの音だった。わたしは背筋に悪寒が走った。

「おおお、お化けだったらどうしよう?!」

考えられるのは超オカルトな未来のみ。

わたしはびくつきながら音楽室に近付いていく。


それにしても、とても綺麗な音色だ。

「……お化けでも、こんな素敵な曲を弾くんだ……」



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