俺様男に心乱れて
”亮”?

この人は亮介さんをそう呼ぶんだ…

倫子さんはさも疲れたと言わんばかりに、爪を真っ赤に塗った指で前髪をかきあげた。

「ご苦労様です」と私が言うと、

「あなたに言われる筋合いはありません」

と、睨まれてしまった。

この一言で、倫子さんが私に好意を抱いていない事、と言うより、私に敵意を持っている事がはっきりしたと思う。


「わたくしの事は、亮からお聞きなのかしら?」

「ええ、少しだけですけど」

「そう? じゃあ、仕事だけの関係じゃない、という事もご存知なのかしら?」

「はい。ただし過去の話と聞いています」

いったんは勝ち誇るような表情をしていた倫子さんの顔が、見る見る悔しそうに歪んでいった。
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