俺様男に心乱れて
喫茶店のマスターにちゃんと挨拶したかったけど、会って話すときっと引き止められると思うので、店の外から見えるマスターに向かい、私は小さく頭を下げた。

「マスター、長い間ありがとうございました。励ましてくれたのに、こんな結果になってごめんなさい…」



上野から特急列車にのり、更に在来線に乗り継いで、生まれ育った故郷の小さな駅に降りた。

18で上京した時、家族と友人達から笑顔や涙で見送られた駅。
こんな風に一人ぼっちで、帰って来たくはなかったな…


都会と違い、駅前でも平日の夕方にタクシーなどは停まってないので、実家までの20分ほどの道のりをてくてくと歩いた。

東京よりも明らかに冷たい冬の空気に、耳が冷たくなって痛かった。
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