俺様男に心乱れて
「母さんやおまえ達には、苦労させてすまなかった。と言っても今更だよな。過去に戻ってやり直したいよ」

「確かに今更よね?」

私はずっと父を恨めしく思って来た。
お酒に溺れず、ちゃんと働いてくれて、私達を大学まで行かせてくれたなら、私も和夫ももっと良い人生を送っていたのではないかと思う。

でも、痩せてしまい、大人しくなった父を見てると、恨む気持ちよりも哀れに思う気持ちの方が強い。
父なりに、悩みや苦しみがあったのではないかと思う。そんな考えをする自分が、我ながら意外ではあるのだけど。


「でもお父さんはまだ若いんだから、体を治して長生きしてよ」

「小枝子…」

「そうよ、父さん。孫を見るまでは頑張らなくちゃ。ね?」

「そうだな」
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