俺様男に心乱れて
母がお膳の上にガスコンロを置いた。今夜は私の好物の牡蠣鍋とのこと。

キンピラやマグロの刺身など、母は本当に私の好物を用意してくれていた。

「さあ、食べましょう?」

「和夫(かずお)は?」

「あの子はいつ帰って来るか分からないから、先に食べてましょ? 今夜は小枝子が帰って来るから、なるべく早く帰らせてもらうって、メールが来たけどね」

「いつも遅くまで頑張ってるの?」

「そうよ。整備士の資格を取るんだって、張り切ってるわ」


和夫は5つ離れた弟で、高校を出て隣町の自動車修理工場に就職していた。

「そうなんだ…。偉いなあ」

子供だとばかり思っていた弟だけど、しっかり地に足を着けて頑張ってるんだなあ。私なんかとは違って…
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