俺様男に心乱れて
私達が晩ご飯を食べ始めてから少しして、和夫が帰って来た。

一年ぶりに見る和夫は、ずいぶんと大人っぽく、逞しくなったと思う。

「腹減ったー。食うぞう!」とか言って、ご飯をもりもり食べ始めた。その食べっぷりを見ていたら、亮介さんを思い出してしまった。


「姉ちゃん」

「なあに?」

「東京で何かあったの?」

来た…

和夫が口をモグモグさせながら、さりげない感じで核心を突いて来た。

父も母も、お箸を持つ手を止め、私の返答に注目しているのを感じる。

きっと父母もそれが気になりながらも、聞くのを躊躇していたんだと思う。あるいは私から話し始めるのを待ってくれていたのかも。でも和夫は若いから、その辺はストレートなのだろう。


「何もないわよ」

努めて平静を装い、私は考えておいた答えを話し始めた。
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