俺様男に心乱れて
「女優になるのは諦めちゃったの。私には才能がない事が解ったし、向いてないと気付いたから。だから東京にいる意味がなくなっちゃったから、帰って来たのよ」

「ふーん、そっか…」

和夫はそう言って普通にご飯を食べ続けていた。

やれやれと胸を撫で下ろしていると…

「向こうにいい人はいないの?」

と、母から聞かれてしまった。

「い、いないわよ」

内心は慌ててしまったけど、『いるわけないでしょ?』という感じを込めてそう答えた。

私は今まで、家族に異性の話をした事がなかった。

「そう? 小枝子はこんなに器量良しなのに、縁がないのかね…」

「そうみたい」

ごめんなさい、お母さん。
亮介さんとの事は、誰にも話したくないの。
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