俺様男に心乱れて
部屋に戻り、バッグから荷物を出していった。

電源を落としたままの携帯と、指輪が入った小箱は机の引き出しの奥に仕舞っておこう。

そう言えば、私は亮介さんの写真を1枚も持っていなかった。こんな事になるなら、写メの1枚ぐらいは撮っておくんだったなあ。

でも、写真なんかなくてよかったのかもしれない。その方がきっと早く亮介さんを忘れられるから。

いつしか私は、亮介さんの顔すら忘れてしまうのだろうか…

そう思ったら、胸がズキンと痛んだ。やっぱり、忘れたくない。
忘れた方が楽かもしれないけど、亮介さんと過ごした日々を、なかった事になんかしたくない。

いったん仕舞った小箱を取り出し、蓋を開くとダイヤが神秘的な光を放った。

亮介さんったら、どうしてこんな豪華な指輪を買ってくれたんだろう。無駄遣いはしないんじゃなかったの?
もっと小さな石で良かったのに。そうすれば、いつも指に嵌めていられたのに…
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