俺様男に心乱れて
何日か過ぎ、そろそろハローワークへ行って働き口を探そうかなと思っていた頃、朝の食卓に並んでいたタクアンの臭いを嗅いだ途端、いきなり吐き気を催してしまった。

私は慌てて口を押さえ、トイレへ駆け込んだ。
胃の中は空っぽだから、戻すのは唾液と胃液だけで、それがかえって苦しかった。

吐き気が治まり、涙目でトイレから出ると、母が難しい顔をして立っていた。

「小枝子、あんた…」

「なに?」

「妊娠してるの?」

「え? ……違う、と思う」

「生理はあるの?」

「それは…」

そう言えば、まだ来てなかった。割と規則正しい方なのに、もう2ヶ月近くも来てなかった。

「心当たりがあるなら、病院へ行きなさい。一緒に行ってあげようか?」

「ううん。お母さんは仕事でしょ? 一人で行けるから大丈夫」
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