俺様男に心乱れて
「姉ちゃんと赤ん坊の面倒は俺が見るよ」

私達三人は、唖然として和夫を見詰めた。

「和夫、あんた何を言い出すのよ?」

「冗談よね?」

「いや、本気だよ。俺は姉ちゃんが大好きだから、俺が守ってやりたいんだ。頑張って働いてさ」

「和夫だっていつかは結婚するでしょ?」

「しないよ。彼女なんていないし、これからも作らない。結婚なんてしなくていいと思う」

「気持ちは嬉しいけど、和夫に甘えるわけには行かないよ。和夫の人生を犠牲にして、生きてなんかいられない」

「姉ちゃん…」


「まあ、とにかく小枝子は体を大事にして、無事に赤ちゃんを産む事に専念しなさい。先の事は、また考えればいいじゃない?」

「ありがとう、お母さん」

母の言葉に私は救われた気がした。父と和夫は納得できない表情だったけど。

それにしても、母がこんなにポジティブな人とは知らなかった。”母は強し”という事だろうか…
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