俺様男に心乱れて
「では、私を許してくださるのですか?」

「許すも何も、私は誰も恨んだりしていません」

恨むとしたら、叶うはずもない相手の亮介さんと、出会ってしまった運命に対してだけだった。

「小枝子さん、東京へ戻ってくれませんか? 亮介様もそれをお望みですから」

「そう言って戴けるのは嬉しいですが、それは出来ません。私は亮介さんのためにならない女ですし、亮介さんは今頃は私に愛想を尽かしていると思いますし…」

今頃亮介さんはあの置き手紙を読み、きっと呆れていると思う。そして、私がいなくなってむしろホッとしているんじゃないかと思う。

「まあ、それについては別のお方が説得してくださるでしょう」

「え?」

どういう事?

「あ、お見えになりました。では、私はこれで…。東京でお会いしましょう、若奥様」
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