俺様男に心乱れて
「なぜ俺に黙って出て行った?」

耳元で聞こえる亮介さんの声は、怒りを含んでいるようにも聞こえるし、労るような優しい声にも聞こえる。

「置き手紙を読んだでしょ? 私はそういう女なのよ」

「あんな物、俺が真に受けるわけないだろ?」

その時、黒崎さんが運転する黒塗りの車が、雪の中を静かに走り去って行くのが見えた。
去り際、私達に頭を下げた黒崎さんが、ニッコリと微笑んだように私には見えた。

「黒崎さんから全て聞いたよ。そして俺は倫子とお袋を問い詰め、二人がおまえにどんな酷い事を言ったのかを知った。
小枝子、辛い思いをさせてしまって、すまなかった」

「いいえ、お二人が言った事は事実ですから…」

「いや、それは違うぞ」
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