俺様男に心乱れて

「まあな」

亮介が倫子に腹を立て、即刻解雇しようとした時、それを思い留まらせたのは他ならぬ小枝子だった。

確かに倫子の言葉に傷付いた小枝子だったが、その内容は根も葉も無い事ではなかったし、仕事とは無縁な事だからと。

しかし倫子が自分の側にいると小枝子の心配が絶えない事は解っていたので、小さな会社をひとつ立ち上げ、倫子を社長に置く事で倫子と距離を置くようにした。

倫子の後任の秘書には、ちょうど北島家に辞表を出していた黒崎を、運転手を兼ねて抜擢した。

黒崎に秘書経験はないものの、亮介が見込んだ以上に黒崎は有能だった。元々黒崎は亮介のお目付け役みたいなところがあり、口喧しい所が玉に傷だが。