俺様男に心乱れて
「アップルパイ、おまえが作ったのか?」

「そうよ」

私はキッチンのテーブルにバスケットを乗せ、蓋を開けてアルミホイルに包んだアップルパイを取り出した。

「包丁とお皿あるかしら?」

「おお、待ってろ」

亮介さんから包丁を借りてアップルパイを切っていたら、

「なあ?」

「なあに?」

「俺が甘い物苦手だったらどうする?」

思わず包丁を持つ手が止まってしまった。

「そうなの?」

「嘘だよ。甘い物は平気だ」

「もう…脅かさないでよ」

「でも、そういう可能性もあったんだぜ?」

「そう言われればそうね。亮介さんって好き嫌いあるの?」

「まあ、基本的にはないね。唯一シイタケだけはダメだけどな」

「そうなんだ…」覚えておかなくちゃ。
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