レモン

夜道でくっついて歩く二人の人間がいたら
《おそらく沢山いると思うけど》

おそらくそのうちのどれかが私
《見つけられるわけはないと思うけど》

でもこれだけペアができるって不思議だよね
《不思議すぎる！》

それに執着しちゃって、結婚しちゃって、

なんだろうね。

目的とか何もないじゃん。

それって。


私のパパは、私が生まれてきたそれだけでいいんだ。

って笑っていた。

馬鹿らしいなぁーって思った。

小さいなぁーとも思った。


だって、私たちには無限の可能性があるんでしょ。

夢に向かうんでしょ。

幸せを掴むんでしょ。

小さいよそんなの出来事。


だってさ、

就職して、

結婚して、

子ども生んじゃって、

ママになって、

侮辱されて、

見下されて、

シワが増えて、

老いて、

終わり。


なにこれ、

最低。

夢ないじゃん。

希望ないじゃん。

ぎゃふん


もういいや、

明日、地元の友達と一緒にお祭りに行こう。

それで今日着れなかった浴衣を着よう。

あのお水みたいな黒色の浴衣じゃなくて、

青色の普通の浴衣にしよう。

そしてお祭りの後、おばあちゃんの家に行こう。


なにこの明日の予定、ショボすぎ。

彼が私の頭を撫でて、

『代替要員でも、今日は楽しかった。あと、君は笑っている方がいいからな』


彼は慌てて改札に切符を入れて、それを口に銜えてホームへと走っていった。

私はその後姿を見て、こんなお祭や人生も、

ちょっといいかもって、

ちょっとだけ思ったんだ。