それでも愛しい人よ〜慎物語〜
――…
「そちが瀬川か。面を上げい」
「はっ」
俺は江戸城主である将軍・久喜様に顔を向けた。
――あの後、俺は無事江戸城の剣士になった。
そして今は初めて殿様に顔合わせをしている。
「ほぅ、凛々しい良い目をしておるな。そちの剣術の腕に関しては聞いておるぞ!!これからは江戸の為に最善を尽くしてくれ」
「はっ」
俺は殿様の言葉に対してハッキリと返事をした。
今日から俺は江戸城の使用人。
次期大阪城主ではない。