おちこぼれサンタクロース
ゆらゆらと前に後ろにと椅子が揺れる。
おばあちゃんはどこかに行ってるみたいだ。
「おじいちゃん!」
「おお…ルーシアか、おかえり。
ほら、こっちに来なさい」
「うんっ」
にっこりと笑っておじいちゃんに走り寄った。
昔はこうして、いっつも話を聞いてた。
絵本に出てくるサンタみたいに優しいおじいちゃん。
おじいちゃんはあたしの理想のサンタだ。
「随分服が汚れているね。
ソリの練習でもしてきたのかい?」
「うん、やっぱり落ちちゃうから…。
ねえおじいちゃん?」
「なんだい?」
ゆっくりと頭を撫でられる。
ロベルトになったみたいだ。
「おじいちゃんは初めて空を飛んだとき、怖くなったの?」
「はは、誰だって怖いさ。
人間は飛ぶようには生まれていないからね」
「じゃあ落ちた?」
「落ちてはいないよ」
「……そっかぁ」
やっぱり、落ちこぼれなのはあたしだけか…。
ロベルトを信じきれてない、んだよね…。
ロベルトも悲しいよね…。
今までずっと一緒にいたのに信じてもらえないなんて…。
あたしがしっかりしなきゃ!
じゃなきゃ、高く飛べないんだ。