おちこぼれサンタクロース



ゆらゆらと前に後ろにと椅子が揺れる。

おばあちゃんはどこかに行ってるみたいだ。


「おじいちゃん!」

「おお…ルーシアか、おかえり。
 ほら、こっちに来なさい」

「うんっ」


にっこりと笑っておじいちゃんに走り寄った。

昔はこうして、いっつも話を聞いてた。

絵本に出てくるサンタみたいに優しいおじいちゃん。

おじいちゃんはあたしの理想のサンタだ。


「随分服が汚れているね。
 ソリの練習でもしてきたのかい?」

「うん、やっぱり落ちちゃうから…。
 ねえおじいちゃん?」

「なんだい?」


ゆっくりと頭を撫でられる。

ロベルトになったみたいだ。


「おじいちゃんは初めて空を飛んだとき、怖くなったの?」

「はは、誰だって怖いさ。
 人間は飛ぶようには生まれていないからね」

「じゃあ落ちた?」

「落ちてはいないよ」

「……そっかぁ」


やっぱり、落ちこぼれなのはあたしだけか…。

ロベルトを信じきれてない、んだよね…。

ロベルトも悲しいよね…。

今までずっと一緒にいたのに信じてもらえないなんて…。

あたしがしっかりしなきゃ!

じゃなきゃ、高く飛べないんだ。



< 7 / 24 >

この作品をシェア

pagetop