愛し-kanashi-


しばらく歌っているとその子は言った。


「ねぇ、どうして泣いているの?」


その質問の意味が分からなかった。俺は涙なんか流していない。「泣いてないよ?」と聞くとその子は答えた。


「でも、貴方は今から泣くでしょ?」


え?っと思った。すると俺の目から雫が零れた。

あれ。俺何で泣いてるんだ。

そう思って、考えているとその子は俺を抱きしめた。

「泣きたい時は泣かなきゃ駄目だよ。」

俺は何も言わないでその子に抱きしめられながら泣いていた。
その子は俺の歌を口ずさんでいた。さっき口ずさんでいたメロディーを。

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