愛し-kanashi-
「 お前誰?」
その男は当たり前のように俺にそう言った。
すぐに自分の立場が理解出来た。
俺とその男二人は遥香にとって本命の相手であり、浮気相手でもある。
俺はすぐに部屋から出た。
それからは遥香に連絡もしなかったし連絡が来てもシカトを続けた。そんなある日のことだった。仕事が終って自分の家に帰ると部屋の前で遥香がしゃがんで待っていた。
「 なにしてんだよ。」
俺がそう言うと遥香は顔をあげて俺を見た瞬間に泣いて「 悠太とやり直したい。」と言った。「 浮気女とか無理なんだけど。」と冷たく言うと遥香は立ち上がってマンションの柵をよじ登り「 じゃあ、死んでもいいよね。」と言って微笑みかけた。
「 悠太じゃなきゃ嫌なの。浮気したのは寂しかったから。けど私は本当は悠太じゃなきゃ嫌なんだよ?悠太がそばに居てくれないなら生きる意味ないよ。本当に大好きなんだよ?ねえ、そばに居てよ。頑張っていい女になるから。だからそばに居て?お願い。」
遥香はずっとそう言っていた。けれど本当に死ぬわけないと思った俺は「 無理。死にたきゃ死ねよ。」って言ってしまった。
「 わかった。悠太が望むならいいよ。」
遥香は笑ってそう言って飛び降りたんだ。