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第一章

I



心地のよい一定のリズムを刻んでこっちに向かってくる足音がする。



アパートの戸の鍵穴に鍵が差し込まれて、ガチャっと音がする。



遠慮がちにゆっくりと開かれた戸は、ゆっくりと閉まって…足音が近づいてくる。



セミダブルのベッドでぐったりしている私にその足音の持ち主は



「寝てんのか?」



とお世辞にも優しいとは言えない声をかけ、セミダブルのベッドに腰を掛けた。



酷く疲れているみたいだった。手を付いていた右手が動く気配がした。


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