我が家の妖怪様
 大学が終われば直ぐさま家に直行。まだ術者として目覚めたばかりの俺は、風を操る者としての修業を積まなければならない。
 帰れば直ぐさま本堂へ向かう。俺の修業相手は親父と天狗様。二人から言われたことを熟していかなければならないのだが。

「風を起こすのに時間が掛かり過ぎだ」

 風を自身で起こす訓練をしているんだけど、どうも上手くいかない。親父はもっと集中しろと煩いし、泰葉はもっと風の声を聞けと煩い。
 俺は結局どっちの言うことを聞けば良いんだ? 泰葉の言いたいことも、親父の言いたいことも分かる。

 しかし、双方からそう別々のことを言われれば、どうしたら良いのかと悩む。

「主にこれを貸そう」

 本日の修業が終わり本堂に寝そべる俺に泰葉が差し出したのは小さな箱。中を開けようと蓋を握るも、全然開かない。
 力付くで開けようと、手や指に力を入れるも蓋はびくともしない。泰葉を睨み見れば、泰葉は肩を揺らし笑っている。

 さては、開かずの箱を俺に渡したな?

「開かずの箱ではない。簡単に言えば、風を起こせば簡単に開く。それが開けれるようになれば、風を自身で起こすのもすぐのこと」
「どういう事だ?」
「その箱が開けれれば、思い通りに風を起こすことも出来ると言うわけじゃ」

 成る程な。
 自分が持つ術を鍛練するように作られた箱と言うわけか。これなら一人でも修業が出来る。
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