我が家の妖怪様
 あれから一週間が経った。
 俺の継承式まで後一週間だと言うのに、相変わらず力を使えない俺だった。

「鳴海悠斗とは貴様か?」

 講義が終わり大学の門を潜れば、青い髪をした女に声を掛けられた。扇子で口元を隠し、パンツスーツに身を包んだ女に俺は見覚えがなく首を傾げた。

「鳴海悠斗、お命御免!」

 首を傾げる俺の首を水の輪が締め上げる。咄嗟に俺の中から泰葉が現れると、俺の首を締め上げる水を炎で蒸発させ、命は助かったが。
 女を追いかけ飛び立とうとした泰葉が俺に人型の紙切れを放り投げると、呪文を唱えた。

 その紙切れは呪文と共に、紙から人へと代わると俺を見下ろした。

「泰葉の式神か?」

 俺が問い掛けると、そいつは静かに頷き俺を抱き上げ空に向かい飛び上がった。地面から数メートル離れ着地すると、それを繰り返し家まで帰る。
 泰葉の式神なだけあって寡黙だ。
 会話もなく家まで俺を送り届けると、泰葉が戻るまで俺の傍から離れなかった。

「ご苦労」

 泰葉が戻り式神に一言言えば人型の紙切れを破り捨てた。それと同時に式神は消え跡形もなくなった。
 群真さんは式神の人型を破ったりしなかったのに、泰葉は意図も簡単にそれをした。術者の式神と天狗の式神は何か違うのだろうか?

「悠斗、変わりはないか?」
「ん、ああ。式神がずっと傍にいたし、大丈夫」

 俺が答えると泰葉は付けていた天狗の面を外し、優しく微笑んだ。いつも思うが、その面に意味はあるのだろうか?
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