我が家の妖怪様
 天狗の面を泰葉が装着するのは、必ずと言って良い程俺達家族以外がいる時だ。群真さんの前でも面は付けていたし、大学にいる時も付けている。

「面外した方がカッコイイのにな」

 呟いた俺に泰葉は面を見つめ首を傾げた。はっきり言って天狗のお面って恐い。恐くて当たり前なのだろうが、面を外した泰葉は、男の俺から見ても良い男の類いだ。
 他人には見えないが、もし他人が見たらきっとみんなカッコイイと声に出して言うだろう。

「その面、付けて意味あるのか?」
「―…あるが」
「外したままだと、どうなるんだ?」

 泰葉のお面を取り上げ言えば、何故か焦り面を取り戻そうとする。冗談で俺が面を付けても何も起こらず、これはただのお面だと言うことが分かった。

「主は阿呆か。この面には色んな意味があるのだ。長として時には顔を敵に知られないように、天狗を恐い物と雑魚共に教えるように、色んな意味がある面なのだ」

 俺から面を取り上げると、お面の役割を話してくれた。身内と言えども、守護者以外の術者に顔を出すのも控えるものだと、頑なに話す泰葉に俺はそこまで気にするものかと、頭を掻いた。

 二百年もの間、どんな術者がいたのか知らないが、術者の前でしか外せないと言うのも辛くないのだろうか?
 篝は平気で顔を出していたと言うのに、泰葉は篝だけといる時だけ面を外していたくらいで。

「同族の術者にも見せないのか、素顔」
「主(あるじ)だけしか見せん」

 篝と違い真面目過ぎるのもどうなのかと、俺はため息をついた。でも、今の泰葉には何を言っても通じなさそうだと、俺はこれ以上言うのを諦めた。
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