我が家の妖怪様
 かたかたと音を起て始めた箱に、全神経を集中させる。

「うあぁぁぁっ!!」

 俺の身体の周りにゆっくりと風が吹き始め、声を挙げればどんっと音と共に下から上へ突き上げるような突風が吹いた。

「今じゃ! 蓋を開けい!」

 泰葉に言われ蓋に手を当てると、あんなに堅くて開かなかった蓋が、意図も簡単に開いた。

「あ…開いた! 泰葉開いた!」
「気を抜かずに箱の中身を取り出せ!」

 喜ぶ俺に泰葉の怒鳴る声が聞こえ、俺は焦り箱の中に指を入れた。かさかさと音が聞こえ、取り出せば人型の紙切れが二枚。

「悠斗! この風を紙に封印するのじゃ!」

 この風を紙切れ封印する?
 ど、どど、どーやって!? 簡単に泰葉は言うけれど、俺は風を自分の意思で呼び起こすのも初めてのことなんだ。
 これが出来たから、あれも出来ると言うわけではないんだぞ!? 困り果て泰葉を見つめるも、泰葉は心の中に話し掛けるだけで。

「己の意思と風を紙切れに封印するのだ」
「俺の意思と風を……?」
「―…そうじゃ、悠斗の思う風の姿を、紙切れに入れるのじゃ」

 俺の思い描く風の姿は―――

「風に命令する! 我が分身となりて我に支えよ!!」

 てか、支えて下さい!
 俺は意味も分からず声を挙げ、紙切れを吹き上げる風の中へと放り込んだ。暫くすると、びゅうぅぅっと音を起てながら風は止んで行った。
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