僕は君のもの
それから一ヶ月くらいすぎた頃。
練習が終わって帰るところで佐野先輩から声をかけられた。
「柏木、元気?最近夜のバスケに来なくなったよな。なんかあったのか?」
私は戸惑いながら答えた。
「……いえ。なにもないですよ」
「なんかいつも柏木とバスケしてたからいないと寂しくて。」
そんな嬉しいはずの言葉も今の私には苦しかった。
「それになんか最近元気ないような気がして。」
「大丈夫ですよ。来週は行きますね。」
「絶対だからな。あ、今度の日曜日みんなで御飯食べに行くんだけど柏木もどう?」
「えっと……」
「行こうよ。俺もっと柏木と仲良くなりたいんだ。」
「分かりました。あの、彼女さんもいくんですか?」
「いや、あいつはもともと別のチームに入ってるからさ。練習もこの間の一回しか連れて行ってないよ。」
「そうなんですね。」
なんかすごくほっとした。
「じゃあ、はい。携帯出して」
「え?」
「連絡先知ってたほうが、いいだろ。」
「あ、そうですね。」
お互いに赤外線送信をした。
「いつでも連絡していいから。じゃあ、また明日な。」
「はい!さようなら」
その日の夜は嬉しくて嬉しくて。携帯を握り締めながら寝た。
今思えば、このときにちゃんと諦めておけば、こんなに苦しい想いをしなかったのかもしれない。