僕は君のもの
少しの時間でも、一緒にいて、先輩のさりげない気遣いや優しさに、私はますます惹かれていった。
私は、少し前に、噂で先輩が彼女と上手くいってないことを聞いたのを思い出した。
人気のある人だから、嫌でも噂は耳にするもんだ。
一人でもんもんと考えたら、先輩が不思議そうに声をかけてきた。
「柏木?どうした?そんな難しい顔して。」
「へっ!?いやっ、なんでもないですよ!!」
「ははは。柏木、なんか可愛い。」
そういって、先輩は照れたようにやさしく笑った。
「柏木と居たら、毎日楽しそうだな。」
その言葉と先輩の表情を見たら、どうしても自分を抑えきれなくて、自分の想いを口に出してしまった。
「傍に居させてください。」
「え……?」
「私、先輩のことが好きです。」
先輩は驚くかと思っていたが、表情を変えず言った。
「ごめん、俺、柏木の気持ちなんとなく気付いてた。自分の自惚れかもって思ってたけど、今日の柏木を見て、確信したんだ。」
「そうだったんですか。」
「うん。…てか俺、彼女いるよ。」
「知ってます。でもどうしても気持ちを伝えたかったんです。」
「ありがとう。……実は俺、今、彼女とうまくいってないっつーか、なかなか会えなくて。今の俺は、簡単に柏木に甘えるかもしれない。」
「それでもいいんです。ただ会えれば。そばに居させてください。」
先輩はしばらく考えていた。が、突然腕をつかまれて引き寄せられた。気付いたら先輩の腕の中に居た。
「せ、先輩?」
先輩はなにも言わず、私を離した。そして私の目を見つめ、軽く口付けた。