僕は君のもの

少しの時間でも、一緒にいて、先輩のさりげない気遣いや優しさに、私はますます惹かれていった。



私は、少し前に、噂で先輩が彼女と上手くいってないことを聞いたのを思い出した。

人気のある人だから、嫌でも噂は耳にするもんだ。


一人でもんもんと考えたら、先輩が不思議そうに声をかけてきた。


「柏木?どうした?そんな難しい顔して。」


「へっ!?いやっ、なんでもないですよ!!」


「ははは。柏木、なんか可愛い。」


そういって、先輩は照れたようにやさしく笑った。


「柏木と居たら、毎日楽しそうだな。」


その言葉と先輩の表情を見たら、どうしても自分を抑えきれなくて、自分の想いを口に出してしまった。


「傍に居させてください。」


「え……?」


「私、先輩のことが好きです。」


先輩は驚くかと思っていたが、表情を変えず言った。


「ごめん、俺、柏木の気持ちなんとなく気付いてた。自分の自惚れかもって思ってたけど、今日の柏木を見て、確信したんだ。」


「そうだったんですか。」


「うん。…てか俺、彼女いるよ。」


「知ってます。でもどうしても気持ちを伝えたかったんです。」


「ありがとう。……実は俺、今、彼女とうまくいってないっつーか、なかなか会えなくて。今の俺は、簡単に柏木に甘えるかもしれない。」


「それでもいいんです。ただ会えれば。そばに居させてください。」



先輩はしばらく考えていた。が、突然腕をつかまれて引き寄せられた。気付いたら先輩の腕の中に居た。


「せ、先輩?」


先輩はなにも言わず、私を離した。そして私の目を見つめ、軽く口付けた。







< 35 / 100 >

この作品をシェア

pagetop