僕は君のもの
そう結衣には言って急いだフリをしたものの、時間までには、全然余裕があった。
しかし、特にやることも無い僕は、早めに生徒会室に行ってみんなを待ってることにした。
トントン。
「失礼します。」
「はい。」
そこに現れたのは、柏木だった。
柏木を見た瞬間、僕の心臓は、無駄に早く動いた。
「は、早いね。」
「特にすることなかったから。そういう桐谷くんこそ。」
そういって、少し笑った。
「僕もすることなかったし。」
「そうなんだ。」
会話が続くこともなく、柏木は今日使う資料を席に配り始めた。
『絶対誘えよ。』
そういった裕樹の言葉を思い出した。
なかなか二人になる機会なんてない。今しかないと思い、思い切って聞いてみた。
「あのさ、柏木。コンテストのことなんだけど……一緒に勉強しないか?」
「え?」
「いや、あの、やるからには、優勝したいじゃん。どんなもんだいが出るかもわかんないし。それにお互いのこと質問されるかもだし、あんまり柏木のことも知らないから。嫌だったらいいんだけどさ。」
そう早口で言うと柏木は少し考えているような仕草をみせた。
「いいよ。」
「マジ?いいのか?」
「なんでそんなに驚いてるの?」
「えっ、いや、オッケイしてもらえるとは思えなくて。」
そう言ったら、柏木は声を出して笑い出した。
「柏木?」
「ごめん、ごめん。だってそんなに慌てたり、焦ってる桐谷くん見るの初めてなんだもん。いつも余裕で対応してる気がするから。王子様だもんね。」
「な、なんだよそれ。」
「みんな言ってるもの。王子様かっこいいってね。でも今の桐谷くんのほうが素のような感じがする。それにそんなに嬉しそうな顔、初めてみたもの。」
おかしそうに笑う柏木にどきどきした。
僕は、顔が熱くなるのをかくしながら、答えた。
「そういう柏木こそ。生徒会ではあんまり見せない顔で話してるよ。笑ってるほうが可愛いよ。」
そう言うと、柏木はほんのり顔を赤くした。