僕は君のもの
桐谷くんは、入学したときから、有名だったからすぐ覚えた。
成績優秀。運動神経抜群。なによりカッコいい。私たちの学年では、王子様的存在。
いつも笑顔でみんなと接して、優しい。背が高くて、大人っぽい。モテるはずだ。
告白されているのを何度も目撃した。でもいつも返事はノー。断る時も、相手を傷つけないようにしている。
だけどどうしても、みんなの前の桐谷クンが、本当の姿とは思えなかった。王子様を演じているようにしか。
だから、勉強に誘ってくれた桐谷クンの姿が、王子様とは、あまりにかけ離れていて。崩れた彼をはじめて見て、やっぱりこっちの方が素なのかも…と思ってしまった。
翔も同じくらい人気者だった。桐谷くんと違うのは、翔はみんなの前でも、そのままの姿だということ。
私の前では、甘えたり、意地悪したり、違う一面を見せてくれたけど、基本変わらない。噂通り、優しくて、桐谷クンに負けないくらい、モテていた。
……だめだな、私。すぐ翔のこと考える。
やっぱりもう無理なのかな?