honey blood
ブツブツ言いながら、吹雪は俺たちを車に乗せて連れてきてくれた。



「大きなお屋敷…」

「うちの分家。マリの家だから」

「先生の!?」

「あぁ、入ろうか」



家の造りはうちに似ていて、ここにいる理事長も結構権力者。



人間との共存を深く望んでるから、蜜を拒絶したりはしないだろう。



「ご足労傷み入ります」

「久しぶり」

「その子が紫様の?」

「マリの教え子でもある」

「お茶でも飲みながら話しましょうか」



相変わらず上品なヤツだ。



立場はたぶん俺の方が上なんだろう。



マリよりずいぶん年下で心も器も広いんだ。



出されたお茶に手をつけない蜜は、やっぱり沈んでいる。



「あれ?なんであんたらがいんの?」

「うちの養子にって話しをいただいたんだよ」

「紫を!?」

「まさか。えっと…お名前聞いてなかったね」



『林 蜜です…』



そう言った蜜が弱々しくて抱きしめたくなった。



辛いこと、全部忘れさせてやりたい…。



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