honey blood
その日は終業式だけで、紫は目も合わせようとしない。



あたしは明日からどうすりゃいいのかな…。



体育館という名の大きなホールから出た紫を追いかけた。



人の波をかき分け、やっと掴んだ紫の学ラン。



「は!?」

「ま、待ってよ…」

「…………」

「あたしっ…なんか…した?」

「こっち来いっ…」



あぁぁぁぁ~…。



腕を引っ張られて連れて来られたのはさっきまで二葉といた図書室。



紫はやっぱら不機嫌で、朝に見たあの優しい笑顔はウソだったのかも…。



「お前なに意識しまくってんの?」

「へっ…?」

「俺が恥ずかしいだろうが!!たかがキスくらいで…」

「たかがキス…?」

「たかがキスだろ」

「そのたかがキスに何日も考えさせられたあたしはどうなんの!?」

「バカじゃねぇの。あんなの挨拶だろ」



挨拶…。



悩んだこの数日を返せ…。



「さいってー…」

「オイっ…」

「ふざけんな…。あたしっ…初めてだったのにっ…」



なんで泣いてんのあたし~…。



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