秘密
SIDE.今野珠子
次の日、珠子と悠平が付き合い始めたという噂は瞬く間に学年中に広まった。
付き合うことになったその日、仕方がなく珠子が悠平と一緒に下校したからであった。
珠子は憂鬱な気持ちでいっぱいだった。
あまり仲良くないクラスメイトや他のクラスの生徒に馴々しく話しかけられるのは、心地よいものでなかった。
「まさか珠子がね」
「あの門田悠平と!」
仲の良い友達にも秘密にしなければならないので、珠子は悠平に更なる嫌悪感を抱いた。
「やっとご飯だ」
「珠子朝ご飯食べて来なかったの?」
お腹を空かせた珠子に友人の美百合が聞いた。
「うん、食べる気になれなくて……」
すると珠子を誰かが呼んだ。
「今野さん」
「あ、はい私……」
「俺ハジメって言うんだけど、悠平がいつもの所に来いってさ。伝言だよ」
「あ、ありがとう……」
美百合はにやりと笑い、嬉しそうに珠子を見る。
「来いってそんな……」
珠子は悠平に呼び出された。
「行ってきなよ」
美百合は何か言いたげな含み笑う表情で、珠子に弁当を持たせた。