秘密
 

SIDE.門田悠平
 



 
そのとき悠平は非常階段に居た。
呼び出された珠子はじきにここへ来る。
 

 
「はあ」
 

 
悠平の口から小さな溜め息がこぼれた。
クラスメイトからの質問責めに耐えられなくなり、3時限目が終了してからここへ身を潜めていた。
 

 
「門田、君?」
 

「おう」
 

「ずっとここに居たんだ」
 

 
登場した珠子がふわりと苦笑を漏らした。
それを見た悠平は少し心が浮ついた。
 

 
「タマ」
 

「えっ、タマって……あたし?」
 

「珠子だろう?タマじゃん」
 

「そんな猫みたいな……」
 

 
悠平の突然の発言は、珠子をまた苦笑させた。
 

 
「お前今日からタマな」
 

「決定なんだ」
 

 
珠子の笑い方に悠平は目を奪われた。
 

コイツこんなに可愛いんだ。
なんだか、調子が狂う。
 

珠子は階段に腰掛け、弁当を開けた。
 

 
「門田君、お昼ご飯は?」
 

「俺?あとで買いに行く」
 

「あとでって、どこに」
 

「コンビニとか」
 

「学校抜けて行くの?」
 

「ん」
 

 
悠平は良く喋る珠子に少し圧倒された。
 

 
「そうなんだ。でもお腹空かない?」
 

「うん、空いてるけど……俺朝起きるの苦手だし弁当作るのも面倒だし……」
 

「え、門田君自分でお弁当作るの?あたしも一緒」
 

「お前毎日自分で弁当作るの?いや俺は一人暮らしだからな」
 

「そうなんだ!」
 

 
珠子は驚いて目を見開いた。
 

 
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