秘密
 

SIDE.今野珠子
 



 
悠平の好きな甘い甘い卵焼きと、タマネギの入っていないおかず。
翌日早朝6時、珠子は悠平に頼まれた弁当を作っていた。
栄養が偏ることのない、それでいて悠平が喜ぶ弁当。
珠子は異性の為に作る初めての弁当に、とてもドキドキしていた。
 

 
「ふう」
 

 
食べてくれるのかな。
でも作ってくれと言ったのは門田君だし。
別に!好きでこんなことをしているわけじゃ、ないんだから。
気にしない、気にしない。
 

珠子は自分に言い聞かせるようにそう思い込むと、その弁当を包んで鞄に入れた。
学校に着くとまず美百合と話していた。
 

 
「美百合、実は今日門田君にお弁当を作ってきたの」
 

「えっ、門田君にお弁当って本当に?……どうしたのよ急に」
 

「昨日作るっていう約束したから」
 

「そうかあ、珠子もやっと目覚めたか」
 

「目覚めたって何よ」
 

「ごめんって。でもそっか、門田君喜んでくれるといいね」
 

「うん」
 

 
珠子はこの日一番の笑顔を見せた。
珠子は授業の大半を居眠りをして過ごしたが、美百合に起こされたときにはもう昼休憩になっていた。
 

 
「いけないっ、早く届けに行かなきゃ」
 

 
美百合に見送られて珠子は走り出した。
二つの弁当を抱えて悠平の元へ。
 

 
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